2011年12月17日土曜日

【セミナーレポート】長崎総合科学大学 情報学部 知能情報学科の特別講義で「デザインとApple」というテーマで講演させて頂きました(前半記事)

2011年12月16日(金)13:00〜14:30に、長崎総合科学大学 情報学部 知能情報学科の特別講義にて「デザインとApple」というテーマで講演させて頂きました。

会場は、今年の3月に48台のiMac 27inchが教育設備として導入された「情報メディアセンター」で約70名の皆さんにご参加頂きました。

ちょっと長くなりますが、今回の特別講義でお話した内容を、前後半2回にまとめてブログレポートします。
※今回のKeynote資料を全て掲載している訳ではありませんので、ご了承ください。また、画像/映像/資料の出典元は、それぞれ資料中に記載してある通りです。
特別講義のようす
まずは自己紹介を行い、今回の特別講義の流れとして5つを挙げました(時間が足りなくなって5番目のiPadアプリ紹介はすることができませんでしたが...)
特別講演の流れ
まず「デザイン/印刷業界とApple」ということで、デザイン/印刷業界とAppleがどのような歴史を辿り、どのような関係があったのかについて。

印刷の起源を説明するにあたり、聖書の複製に始まり活版印刷で印刷というものが爆発的に普及していった話題を取り上げました。

といっても、私自身も活版印刷機を見た経験がなく、まして自分より10歳以上若い学生の皆さんは言葉すら知らないかも。そんな中で活版印刷を説明するのに、iPadアプリで活版印刷機の仕組みをデモしてみました。
活版印刷とは何か?
デモに利用したアプリが「LetterMpress」。
iPadで活版印刷機を再現し、版の作り込みやインキ・印刷用紙の選択も豊富で、クオリティの高いアプリです。
LetterMpress App
カテゴリ: エンターテインメント
価格: ¥250

アナログの活版印刷についてお話した後、コンピュータの登場にあわせてデザイン/印刷業界はアナログからデジタルへの移行が始まり、その中心的な役割を果たしたのがAppleのコンピュータとAdobeのソフトウェアでした。

印刷の前工程としてのデザインのデジタル化を表現する言葉として「DTP (DeskTop Publishing)」と「WYSIWYG (What You See Is What You Get)」を挙げ、今までのアナログ工程を机の上で行い、またパソコンの画面で見たものがそのまま紙に印刷されて得ることができるという概念のお話をしました。
DTPとWYSIWYG
そしてアナログからデジタルへの移行として「文字」を挙げ、活版印刷時代では手作業で活字を並べて作っていたものが、パソコンのデジタルフォントの登場によって、簡単にパソコン上で制作を行い、簡単に文字種を変えることができるようになりました。
活字からデジタルフォントへ
フォントの次は「写真」を挙げ、写真もフィルムカメラからデジタルカメラへ移行が進み、今でこそデジカメで撮影した写真はすぐにその場で確認・削除ができますが、フィルムカメラの時代は現像に出すまで撮影した写真の確認もできなかったことなどを説明しました。
フィルムからデジタルデータへ
次にデザインの「イラスト」を挙げ、こちらも手書きのイラストからパソコンのIllustratorなどのソフトウェアでベクターデータを作成することで、素材の拡大縮小などの編集や移動、色の変更などが簡単にできることを、実際にIllustratorでデモしました。
手書きイラストからベクターデータへ
最後にこちらはこれからのお話として「印刷」のデジタル化で電子書籍を挙げました。
もちろん「情報」という意味においてはWeb等ですでにデジタル化が遂げられていますが、印刷物の電子化という意味で電子書籍とし、この後の「デザイン/印刷業界の現状と展望」につながります。
印刷から電子書籍へ?
さて、ここからは「デザイン/印刷業界の現状と展望」という内容になり、ちょっと統計データを取り入れてみました。最初のスライドは印刷会社大手27社のデータで、前年度比伸び率が-4.0%。平均年齢が38.8歳、平均勤続年数が12.6年あたりが大手の特徴です。

もちろんこの数字には大手以外の印刷会社は含まれていませんので、印刷業界全体の内容ではありませんが、それはこの後で。

そして、印刷業界の売上高TOP10社が、印刷業界全体に占める売上高の割合は何と95.2%という特殊な業界であるというところをお話しました。
特にTOP2社で約8割のシェアというところも大きな特徴です。
印刷業界の現状(大手27社)
gyokai-search.com調べ
次に、印刷業界全体の推移を示すグラフを取り上げました。
事業所数/従業員数/出荷額がそれぞれ記載されていますが、特徴的な出荷額にフォーカスしてグラフに色をつけてみました。

1991年の赤色になっている部分が、印刷業界全体で最も出荷額が多かった時です。
約9兆円、これは1997年も同程度の水準となり、このあたりが印刷業界全体の出荷額のピークになります。

その後は残念ながら下降線を描いており、2011年現在も回復傾向にはありません。
印刷業界全体の推移グラフ
社団法人日本印刷技術協会調べ
そんな中で、一つ興味深いグラフとして印刷業界全体の中で「出版」の販売額推移グラフを取り上げました。

「出版」も1997年を境に上昇から下降に転じてしまっているのですが、2003年頃から販売額に変化が現れます。「電子書籍」の項目の登場です。

2003年の登場から、非常に緩やかではありますが販売額を伸ばしているのが分かります。
今回の特別講義では、この「電子書籍」の可能性として、いくつかのiPadアプリの事例を紹介しました。
出版販売額の推移
社団法人日本印刷技術協会調べ
まず、定番の電子書籍アプリとして「i文庫 HD」を挙げ、青空文庫を例に電子書籍ならではの機能として「フォントの変更」や「文字検索」などをデモ。

そして電子書籍のこれからの可能性の一つとして、iPadを利用した電子図書館を紹介し事例として「武雄市MY図書館」を挙げました。

最後に電子書籍の形の一つとして「Toy Story 3」アプリをデモし、単純に紙の印刷物をiPad等のデジタルデバイスで読めるようにするだけの電子書籍ではなく、アニメーションや映像などを組み合わせることによって、新しい電子書籍の可能性があることをお話しました。
i文庫HD App
カテゴリ: ブック
価格: ¥800

武雄市MY図書館 App
カテゴリ: ブック
価格: 無料

Toy Story 3 Read–Along App
カテゴリ: ブック
価格: ¥500

ここまでが前半のレポートになります。
長くなるので、後半はまた次の記事にてレポートします。

※価格や機能等は変更になることがありますので、ご注意ください。
※平成23年12月16日現在の情報です。