2011年7月19日火曜日

セミナーレポート「電子書籍とタブレットがもたらすもの」ITジャーナリスト 佐々木 俊尚 氏


先日「第15回 国際電子出版EXPO」にてITジャーナリストの佐々木 俊尚 氏による講演が行われました。

30分程の講演でしたが、メモできた範囲でレポートを書いてみます。

タイトルは「電子書籍とタブレットがもたらすもの」

一般的に、書籍が作られる工程では3つのフェーズがあり、
1.コンテンツ(生成)
2.フォーム(表現手法)
3.コンテナ(流通方法)

に分けられる。

有史以前(文字の発明以前)は、
1.コンテンツ=集合的無意識(作者の概念がない)
2.フォーム=音声(会話がメイン)
3.コンテナ=口承(口伝え)

近代、印刷の時代においては、
1.コンテンツ=作家の行為
2.フォーム=冊子
3.コンテナ=印刷物流

となり、特に「3.コンテナ」部分の印刷物流の進化で、劇的な変化が訪れた。
中世ヨーロッパで、グーテンベルクがルネサンスや宗教改革を引き起こしたのは、このコンテナの変化によるものだった。


では、「2.フォーム」の変化は何を引き起こすのか?

現代の紙媒体の雑誌時代では、
1.コンテンツ=人的編集
2.フォーム=冊子
3.コンテナ=印刷物流

そして現在過渡期の電子雑誌(ex.マガストア・ビューン)では、
1.コンテンツ=人的編集
2.フォーム=冊子「的」
→単なるPDFに過ぎない。
3.コンテナ=電子配信

の変化が訪れてはいるものの、現在の電子書籍は冊子にひきづられている。
紙の雑誌のデザインが全てではないく、全体として電子化が行われていれば、今後フォームの形が変わっていくのは必然。


未来の電子書籍はどのように変わっていくのか?

例えば、
1.コンテンツ=人的編集
2.フォーム=新たな表現技法
→雑誌がアプリ化することで、紙とは全く違う表現手法が可能
3.コンテナ=電子配信


新しいフォームの形として、Adobeのプラットフォームで制作されたWIREDやヒュッテ等が挙げられる。

また、例えば、
1.コンテンツ=ソーシャル的編集
2.フォーム=冊子風
3.コンテナ=電子配信

コンテンツ制作の部分が、従来の人的編集からソーシャル的編集になることにより、「Networked Novel(多くの人の集合知によって小説を制作する)」なども進化していく事が予想される。

ソーシャル的編集の例として「Flight Paths - A networked novel -」「朝のガスパール 筒井康隆」など。

また、上の2例を組み合わせて、
1.コンテンツ=ソーシャル的編集
2.フォーム=新たな表現手法
3.コンテナ=電子配信

のようになることも考えられる。

いずれにしても、スマートフォンやiPadなど、今あるテクノロジーに気持ちが引きずられがちだが、5年後には全く新しい表現手法が生まれてくる。

進化してもかわらないものは何なのか?
新しい表現手法にどう即応し、どう継続的なメディアを展開していくか。

Transmedia(最初から様々なメディアで展開することを想定してコンテンツを制作する)」の考え方も、今後ますます重要になっていくと考えられる。