第38回Apple BUは「iOS アプリ開発の過去から現在」というタイトルでアプリ開発に長年従事されているiOS App Creatorの日高 憲一郎 氏をお迎えし、アプリ開発の変遷についてご紹介して頂きました。
今回の講演内容をレポートします。
まず最初に講師の日高さんの自己紹介。iOS App Creatorになる前は、業務向けシステム開発に15年間従事され、その後独立されたそうです。現在の代表作は「お買い得.net」。
お買い得.net |
現在開発者の多くはアプリのサイズ変更に追われているようです。
次に「年々下がるアプリ開発の敷居」について。
まず金銭的な負担が下がっているとして、AppleへのDeveloper登録の年間登録料が10,800円/年から8,400円/年に値下がりし、開発用のMacの価格も近年下がり、特に開発環境であるXCodeは無料で提供されていることが大きいようです。
また、アプリ開発の際に調べ物をする時の情報量も多く、書籍やWebでの情報など様々あるが、玉石混交なので内容の見極めは必要だそうです。
今回、技術情報共有サイト「Stack Overflow」と「Qiita」を紹介されました。
次に「開発のしやすさ」について4点挙げられました。
1点目が画面デザインについて。
昔は画面レイアウトをコードで記述する必要があったが、XCode 4.0からインターフェイスビルダーで簡単に作成できるようになり、さらにXCode 4.3からはストーリーボードが実装され、アプリの画面遷移までコーディングなしで作成できるようになったそうです。
2点目がメモリ管理に参照カウント方式が採用されていること、3点目がコーディング量が少ないこと(例えばXCode 4.4から配列の扱いが変更になり、コード量が少なくなった)、そして4点目にGCD ( Grand Central Dispatch )を利用することで、簡単にマルチスレッドが組めることを挙げられました。
Grand Central Dispatch |
既存技術者の活用やAndroid OSとのマルチプラットフォーム化で、様々な開発ツール(手法)が提供されているが、見た目、操作性、レスポンス、パフォーマンスが悪いことも多く、例えばFacebookアプリをネイティブ化すると、パフォーマンスが向上した。など様々な事例があるそうです。
また、最近ではプログラムの経験がない方でも、簡単にアプリ開発できるようになりつつあり、Mr.shapeのタッチカードやくまモンのメモアプリなど紹介がありました。
GameSalad |
次に、アプリ制作の現場の需要と供給ということで、需要面では企業でのアプリ制作の要望は高まっているが、収益化や予算の問題があるそうです。
一方供給面では仕事を受けられる開発者が少なく、大手ソーシャルゲーム会社の囲い込みや、日本特有なのかも知れませんがネタに走る開発者が多いそうです。
また、Instagram / Facebook / Pathアプリなどのような標準のUIでは表現できない独自UIが要求される事も多く、高度な技術レベルを持つ開発者を見つけるのはなかなか難しいそうです。
さらに、毎年アップデートされるiOS SDK、審査基準の変化やApp Storeでの検索ロジックの変更など、技術者に要求されるレベルは日ごとに高くなっているようです。
しかし最近では、iOSデバイスのビジネス用途への広がりと共に需要が拡大しており、「Volume Purchase Program」が日本で開始されたことにより、企業や教育期間で大量購入者への割引やB to B向けカスタムアプリの配布が可能になったそうです。
以上、第38回Apple BUのレポートになります。
日高氏は現在、新たなアプリを公開に向けて準備中とのことで、そちらも非常に楽しみですね。やはり第一線で活躍される開発者のお話はリアリティがあると共に、とても勉強になります。
また次の機会で、最新の開発事情をお聞きできるのを楽しみにしています(^^)
ありがとうございました!
※価格や機能等は変更になることがありますので、ご注意ください。
※記事内容は平成24年9月24日現在の情報になります。